プロローグ

2/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
真夜中に止まない雨が降っていた。 ざあざあ、ざあざあと。 ずぶ濡れになり、寒さで凍てついている身体に構わず、彼は一生懸命目の前のモノを刻み続けていた。 ざくざく、ざくざくと。 「いや、拙者だってこのような事、本当はしたくないでござるよ?でも仕方ないでござる。香殿が拙者をあんなにたぶらかすものだから、致し方無しでござるよ。さもありなんでござる。仰せのままにあられるでござるよ…フヒヒヒヒ」 そう独り言を呟く彼の眼は、濁っているにも関わらず爛々と輝いていた。 漆黒の闇が辺りを包んでいたのだが、それだけではない何かが、確かに漂い存在していた。 もっとドス黒い何か、が。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!