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真夜中に止まない雨が降っていた。
ざあざあ、ざあざあと。
ずぶ濡れになり、寒さで凍てついている身体に構わず、彼は一生懸命目の前のモノを刻み続けていた。
ざくざく、ざくざくと。
「いや、拙者だってこのような事、本当はしたくないでござるよ?でも仕方ないでござる。香殿が拙者をあんなにたぶらかすものだから、致し方無しでござるよ。さもありなんでござる。仰せのままにあられるでござるよ…フヒヒヒヒ」
そう独り言を呟く彼の眼は、濁っているにも関わらず爛々と輝いていた。
漆黒の闇が辺りを包んでいたのだが、それだけではない何かが、確かに漂い存在していた。
もっとドス黒い何か、が。
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