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そして、放課後。
結局私はアヤメの誘いを丁重にお断りし、今日も今日とて寄り道することなく真っ直ぐに自宅へ直帰する故、ホームルームを聞き流しながら身支度を整えていた。
「アンタさ、自分が思ってるより相当かわいいよ?やっぱ勿体ないよー、お花見いこーよー」
アヤメ曰く、そうらしかった。
かわいい?私が?意味不明だ。解読不能の推理小説における迷宮入り殺人事件の密室トリック並に謎である。
確かに今まで、ミナミや駅地下を上がった所にある繁華街などで、お店のキャッチに遭ったことは何度かあるけど。
でも、正直面倒なだけだし、内職的な副業を本業とし、学生水準からみてそれほど金銭的に困っていない自分には、無用な話であるし。
まぁそうゆうこと。
「きりーつれーい、さようなら」
そうこうするうちに、学級委員長のやる気のない号令とともに、教室内に存在する学生達が椅子から立ち上がり、各々が散ってゆく。
ついに下校時間の到来だ。
我先にと廊下へ疾駆する人間がいる一方で、ジャンカラ行こーぜ等と集まりながら談笑する複数の人間達もいる。
大抵の場合この2パターンに分類出来るのだが、私はどちらにも属していなかった。
等間隔に並ぶ机の列の最後尾、窓際に座っているある生徒の事を、観察しなければならないから。
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