第一章:邂逅

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これ以上絡むと花見に連れていかれる、というか拉致される危険性が浮上してきたので、アヤメとの会話もそこそこにして私は牧原氏の観察を切り上げ、帰宅することにした。 様々な学生が下駄箱へと向かう流れと同化している道中、左斜め後方より強い視線を感じた。 「………」 うん、きっと気の所為だ。 あれだ、五限目の科学の実験で反応が弱いから加酸化水素水を加算し過ぎて燃焼しそこなった金属の副流煙的なものを吸ってしまい脳が一時的にやられてるのかもしれない。 「おーい、そこの2-B所属の彼女ー」 ほら、何か幻聴がするし。 兎に角、今日は副業お休みにして早く寝て明日に備えることにしようそうしよう。 しかし、下駄箱に着いた所で、私の願いは叶うことなく粉々に打ち砕かれた。 「やあ、奇遇だねハニー。下校時とは言え、お互いこんな丁度良く出くわすなんて、これはもう赤い糸が二人を結び付けているとしか考えられないね」 コイツ、渡り廊下走って先回りして来やがった。 はぁ、と私は思わず嘆息してしまう。 毎度毎度、なんなんですか貴方は。クラスも学年すらも違うのに、私に何の恨みがあって付き纏ってくるのですか。 「それは見解の相違だよハニー。俺達はたまたま、偶然、やもすれば運命に導かれ、出会ったんだ。照れるのは解るが、人をストーカー呼ばわりするのは、止めてくれないかな?」 一度も遊んだ事すらない私をハニー呼ばわりするのも、止めてくれませんかね。
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