緋の記憶

あなたへ

ねえ、あなたは気付いてた？

あなたが貧相で病弱と表現してた頬は、睫毛が長い影を落としていてとても蟲惑的だったし、棒のようだと嘆いていた四肢は本当は華奢という言葉が似合っていて、あなたにしかできない柔らかい動きをしていた。いつ咲いてもおかしくないつぼみを見ているようで、毎日がとても楽しみだったよ。そうそう、お茶を淹れるのが一番上手だったのも、あなただったね。

…そう、あなたの成長を楽しみにしていた。
こんなことをわたしが言うと、子供扱いするなとまた怒るかな？　いいじゃないか。子供みたいなものだった。
抱きしめてしまったことは謝るよ。あれはわたしの柄じゃなかった、と思う。こら、怒るな姫。今いいところなんだから殴ろうとするな。

そう、この乱暴女…、失礼。わたしの姫のこともあなたに紹介したかった。本当だよ。
そんなことをしたらまた怒られてしまうかも知れないが、…うん、そうだな、ごめん。

ごめんな、俺はずるい大人だった。君の墓守には相応しくない、つまらないただの男だ。