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赤くなってるぞ。と彼女に言ったきり、黙ってしまった。
今日の妄想は長めらしい。
当然の事ながら、彼女以外に話し相手がいる訳はなく。
いたらそんな空気読めないヤツ、死んでしまえばいい。
だが我は暇なり。話し相手が、今だけなら欲しい。
そういえば。と、君に話し掛けられる前に考えていた事を思い起こす。何度も言うけど、暇だから。
身長が148センチの彼女の事は、ラブレターを渡されるその瞬間まで、話した事などなかった。
嘘じゃなくて、本当に。
いきなり「これ、読んで下さい」などと、今となっては二度と聞く事はないであろう敬語を使った彼女に、凄く驚愕したのは今でも鮮明に思い出せる。
手紙の封を開けるその瞬間まで、これはドッキリか、友達間の罰ゲームなのだ。と自分に言い聞かせた事も、懐かしい。
その手紙に書いてあった、好きになった理由が、あまりにもアレで吹いた。
『貴方のあくびをした時の顔があまりにかわいくて、あれから忘れる事が出来ません』
あくびかい。
かわいくてって、お前。
あれからって、いつからだよ。
どんだけ衝撃的なあくびだ。
……自宅で、ツッコんだ。
しかも、めっちゃ声をあげて。
だけど、それが良かった。
彼女に、どんどん興味が沸いてく。
こんな理由で恋する子、もはや天然記念物だろ。
ぶっちゃけた話、理由はオレも好きだからではない。
君と一緒に、いてみたかったから。
沸き上がる自分自身のその好奇心に、オレは負けたのだ。
「……着きましたケド」
目の前に目的の建造物が見えたので、とりあえず声をかけてはみる。
反応するかは、知らないが。
「えっ!?」
どんだけ驚きですか。
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