彼の視点。

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 久々にこちらに反応した彼女に、何かしらのコメントをしてあげる。  ――もちろん、意地悪なヤツを。 「……なんでまた、難しそうなお顔をしていらっしゃるので?」 「べっ、別にしてないし!」  この、君の焦る様。  これがかわいくて、オレはこんな性分になってしまったのだが。 「ごまかすの、へったくそ」  オレは悪くない。かわいい反応をする、お前が悪い。  なーんて、心のどこかで責任転嫁をして、傘を畳(たた)んだ。  下駄箱の位置は、遠いという程でもないのだが、この学校内ならば遠いに値する。クラスも、AとFだし。  そんな訳で、ここでお別れ。 「じゃーね。多分、また」 「多分って何!? ねぇ!?」  あえて、ツッコミは無視。  それもオレの性分だ。  ……まぁ、何でもかんでも性分のせいにするのはおかしいが。  靴を履き、歩を進める。  君も、もう行っただろうか。  まぁ、ただ……元々の性分というものはどうやら、そう簡単に変わるモノではないらしい。  自分の濡れた、左肩。  つい、頬が緩んでしまった。
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