彼女の視点。

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 大きい低気圧。  地学のセンセーが、配った天気図の説明を始める。なんでも、今日から私達の住んでいる所に、そのテーキアツって言うのがやって来て、ものすごい風と雨を持ってくるんだって。  ……よく、分かんない。  そんな事はとくに気にもしな……かった訳でもないけど、でもやっぱり気にした。  とりあえず、雨と風がすごい。その情報はおいしかったし。  なーんて思った昨日の授業を考えながら、雨はすごいけど、風はそんなにすごくはない天候の中、折りたたみ傘を広げてケータイをいじる。  風はすごくないじゃん。先生嘘ついたね、うん。  昨日も十分前にはここに来た。  それが毎日の日課……というか、あの人がそうすればいいよって言ったから、私はちょうどいい時間帯のバスに乗り込んで、さっきも言った通り十分前にはここに到着してる。  それなのに、私にそうするよう教えた、当の本人が来ないというのはどういう事なのか。  時間にルーズ過ぎ。  そんな事を思いながら、ケータイの右上の小さな時計に、目をやる。  きっかり七時。  後、三分しかないんだけど。  少し、イライラが募(つの)る。 「そこのお嬢さん、一人かい?」  ──あぁ、なんだ。  ちゃあんと、来てくれた。 「……不審者、みたいだよ?」 「うっせーよ」  踏み切りの音が聞こえ出す。  折りたたみ傘を、急いでしまう。  彼の真っ黒な傘に、入り込む。 「許可したっけ?」 「え? ダメなの?」 「いーよ、一人じゃデカいし」  電車に乗り込むその一瞬まで、私の上に傘を開いている彼。  また、カッコよくなった気がして。
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