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「手、繋ぎたい」
「アーホ。右の手で傘持ってんのに、どうやってだよ? 大体、人の目ってもんを気にしろ」
数秒で、私の案は却下。
さすがにそれはひど過ぎない?
電車の中でも、私が腕組もうとしたら、振り払われるし。
カッコいい。んだけど……もう少し、そういう事さ?
たまにはマジメじゃなくたって、いいじゃん。
――なーんて言っても、きっと絶対にダメなんだろうなぁ。
「大体オレ、お前と一緒に登校するだけでみんなからなんか言われるのにさぁ……。相合い傘とか、格好の的だぞ、これ」
「……出ればいいんでしょ」
小さな温もりが溢れてた黒い傘から、私は抜け出した。
「だから、何でそうなんだよ?」
その傘が、すぐに私の上を覆う
……なんでって?
いっつも、迷惑そうにするから。
外で手を、繋ぐ時だって。私が、話をしてる時だって。
周りでたまに見かける、楽しそうに笑って話してるカップルとか、手を繋いで一緒に歩いてる人達が、たまに物凄く羨ましくなる。
二人きりの時は、すっごい優しくて、すっごいカッコよくて、ものすっごく積極的で……
「どした? 赤いぞ。顔」
ハッ。として、我に帰る。
「なな何でもないっ! 別に!」
「嘘つくの、相変わらず下手」
「う~る~さ~い~!」
幸せ、なんだよ?
君と一緒に、いられるのは。
すっごく、好きなんだけど……
なんなんだろうなぁ。
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