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『ん-、気持ちいい。』
『そうだね。』
『久しぶりだな、庭に来たの。』
そう言って、少し先をかめは歩いて行った。
『かめはよく来るの??』
『うん。』
『そうなんだ。』
『実はね。』
そう言ってかめは花壇の方にしゃがんだ。
『僕、肺気腫っていう病気なんだ。だから、ずっと入退院を繰り返してるんだよね。』
『そっか。』
『で、気晴らしによく来てたんだ。』
『そっか。』
『仁は??』
『え??』
『どうして、ここに??』
俺が話そうとかめを見ると後ろからボウルが飛んできた。
誰かが危ないと声を掛けて、かめが避けようと素振りするには遅かった。
黙っていられずに、俺は急いでかめの側に走った。
これがいけなかったんだ。
『..っ...。』
『じん??』
かめは俺を見て、目を見開いた。
声を掛けたかったが、あまりの苦しさに声が出なかった。
『..っ..。』
『仁!?』
「仁くん!?」
看護師さんの声が聞こえ、かめが泣きそうな顔をしてるのを見た所で、俺の意識が途絶えた。
次に目が覚めた時は、ベッドの上にいた。
「仁くん、目覚めた??」
その問いに、俺は小さく頷いた。
「今は安定してるけど、今日は安静しててね。」
それだけ言って、看護師さんは出ていった。
看護師さんが立っていた所にはかめもいた。
俺は酸素マスクを外した。
『..か..め..。』
『じん。』
『..こっち..きて..。』
そう言って手招いた。
かめは今にも泣きそうな顔をしながら近くに来た。
『..どっか..痛くない..??』
『大丈夫だよ。』
『..よか..った..。』
『じん。』
ついにかめは泣き出してしまった。
『..泣か..ないで..。』
『ごめんね。』
『..へーき..。』
『僕が注意して見てたら...。』
『..か..め..。』
俺はかめの名を呼んだ。
『なに??』
『..屋上..行こ..??』
『屋上??』
『..今度..は..俺の..話..聞いて..??』
『わかった。』
『..約束..だから..ね..??』
『うん。』
『...ごめん..ね...。』
『ううん。』
『..少し..疲れた..から..寝る..ね..。』
俺がそう言うとかめは黙って外した酸素マスクを付けてくれた。
『仁。ゆっくり、休んで。』
俺は頷いた。
その後、すぐに眠りについた。
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