第二章

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「そうなんだ」やっぱりエルファには特別な何かがあるのかな。カインはそう思って、あまり深く詮索するのは、やめにした。そして、別なことを聞くことにした。それもカインにとっては重大な問題だった。 「そういえば、おれは何でこんなところで寝ていたのだろう? お母さんとお婆ちゃんは?」心配掛けているかもしれない。だとしたら、早く戻った方がいい。せっかくエルファに会えたけど。  カインが急に深刻な顔になったせいか、エルファは気落ちしたように言う。 「戻りたいの?」 「うん。まだエルファとは一緒にいたいけど。そのうち、戻らないと」 「そうなんだ。でも、それは難しいかも……覚えてないの? カインは」 「え? 何を……」ズキリと心臓が引き締まる思いがした。そうだ。自分は何か忘れている気がする。それもとても大事な、恐ろしい何か。ふと、自分の体を見る。服はところどころ破れ、どす黒い血が染み付いていた。 「え……これは……なん、で?」  首が痛い。思い出したように突然痛くなる。右腕も。激痛が体中を走る。カインは全身を自分で抱きしめるように、小さく蹲って、苦しそうに呻き声を上げた。「あなたはライカンスロープに噛まれたのよ。そして、ライカンスロープの体液は、牙からその傷口へと入り込んで、あなたの血液と混ざってしまった。それは徐々にあなたの全身を蝕んでいく……そしていずれは」 「……何で、おれが……おれが……」カインの目からは涙が溢れ出て、掠れるような声が出る。 「あなたはもうあの村に帰ることは出来ないわ。帰れば、あなたは村人を食い殺すでしょう」 「そんな……どうして、おれがそんなことを」
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