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「まだ分からないの? お母さんに教わらなかった? これは呪いなのよ。もう隠さないではっきり言うね。その体が持って、あと数日ってところ。あと数日で、ライカンスロープの呪いはあなたの体中を巡り、あなたの血と呪いは完全に混ざり合い、別のものに成り代わる。その時、あなたは人として死に、亡者として蘇るのよ。そうあなたを襲ったあの男のように」
そうだ。聞いたことがある。ライカンスロープに噛まれたものはライカンスロープになってしまう、と。しかし、それは御伽噺での話だった。そのはずだった。忘れていた。すっかり。そうだ。自分は確かにあの夜、ライカンスローープに出遭ってしまったのだ。村の掟を破ったから。あれほど、婆ちゃんに言われていたのに。御伽噺での話のはずが、現実に起こってしまったのだ。
「ライカンスロープになれば、その体には見合わない強力な力と俊敏な動きが手に入るでしょう。しかし、その代償として、大量の血を求めるようになる。人の血によってしか、その体を維持できなくなる体質になってしまうの」
もはや、カインはその言葉を聞いていなかった。自分は狼人間になってしまう、そんな緊張と、もう村には戻れないという絶望が彼の心の中を渦巻いていた。
「ライカンスロープになることは、もう止めることは出来ないけど、人の血を飲まずに生きていく方法なら、一つだけあるわ」
放心状態になっていたカインに少しだけ、光が差した。カインはエルファに視線を合わせ、しっかりと聞く姿勢をとる。しかし、それはカインにとって絶望的な答えだった。
「定期的に、竜の血を飲めばいいのよ。竜の血が、人を襲いたくなる衝動を和らげてくれるわ」
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