第二章

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† エルファ  カインの傷の痛みはどうにか落ち着いたみたいだった。それだけ分かったのが、エルファにとって唯一の救いだった。誰かを助けるということはこういうことなのかもしれないと、エルファは、息絶えたアンスウェルの死体を見て、そう思った。軽々しくアンスウェルにお願いしていた自分を思い出して、自分はずるい人間だと思った。不意に自分の両手を見る。アンスウェルの命を奪った両手を。洗い流していなかったから、まだ血は残っている。刺した時の感触まで蘇ってきそうだった。手が震える。アンスウェルの血は、自分に何かを訴えかけているかのようだった。青白く、光っている。理由は分からなかった。 † カトレシア・ローレンス  まだ月も落ちていない早朝だった。薄暗さが未だに残る。カトレシアは村の男達を集め、エルファの森を探索する部隊を編成していた。人数は三十人程度だった。この村にしてはよく集まったと、カトレシアは思った。集めるのは簡単だった。この森には竜がいる。そして、私がその竜を倒してみせる。そう言っただけだった。そして、竜こそが邪悪の根元、失踪事件の真相かもしれないと付け加えてみせた。この村でも竜は化け物扱いであったのが救いだろうか。たまに竜を神聖視している場所があるから、困りものだ。この世界の頂点に立つべきは人間だと、カトレシアは思っていた。そして、強大な力を持ち、自由に空を飛びまわる竜達は、唯一の人間の脅威だと、彼は考えている。
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