第二章

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† カトレシア・ローレンス  一頭の馬が高原を走っていた。その上には大柄な男、カトレシア・ローレンスが跨っている。カトレシアは空を飛び回る影を追いかけていた。あちこち雲で見え隠れするそれを見逃さないように、必死に目を凝らして、手綱を握る。  やがて、その影は森の木々に紛れ、消えていった。ほんの少しの間だった。しかし、カトレシアは大体の見当を付けて、馬首を微妙な角度に回し、それを追いかけた。  暫くすると、山の頂上に出ていた。見下ろすと村が小さく見えた。こんなところに村があるなんて。カトレシアは驚きを隠せず、抑えきれない好奇心に背中を押され、斜面をゆっくりと降りていった。  そこは周りが山と深い森に囲まれた、人も少なそうな寂れた村であった。外界から孤立し、閉ざされている。そんなイメージだった。  しかし、いざ、入ってみると、辺鄙で貧しいながらも皆、平和で穏やかな暮らしをしているのが分かる。子供達は元気よく村中を駆け回り、男達は畑を耕し、女達は小さな子供の面倒を見ていた。呑気だ。そして平和だ。
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