第二章

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しかし、これで村に溶け込むことは容易であった。何より村の人たちは気が大らかで優しい者が多かった。自分は外部の人間だというのに愛想よく世話をしてくれるのだ。あとは言葉さえ通じればそれで充分であった。そして、カトレシアはその好意に甘え、暫くの間、とある一家に滞在させてもらうことになったのだ。しかし、その夜、さっそく事件が起きた。一人の少年が失踪したのだ。カトレシアも探索を手伝ったが、その夜は結局見つからなかった。 「ライカンスロープの仕業かもしれない」  そのような噂をよく耳にした。ライカンスロープといえば、狼人間のことだ。人間が、狼のようになって、自我を失い、狂ってしまう呪い。はたまた病気という俗説を唱える者もいるが、よくは知らない。害ならば排除するのみ。カトレシアはそう考えるだけのことだった。腰に掛けている剣が疼いた。最近、歩いてばかりだったからだ。そう思う。やはり自分は常に戦いを求めてしまう性質なのかもしれない。  カトレシアはこの村に迷い込む前の、当初の目的を思い出した。そうだ。私は、逃げた竜を追いかけていたのだった。竜の首を取ったら、それを手土産にして、どこかの王にまた拾ってもらおうかと考えていた。  力と功績が全てだった。それさえあれば、なんとでもなるのだ。 「そう、竜だ。奴は、この周辺に隠れたはずなのだ。きっと何処かにいるはずだ」  ライカンスロープの噂だって、本当は竜の仕業かもしれないではないか。
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