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中性的な顔立ちに物腰の柔らかい沖田の姿を、蝋燭の燈が照らす。
……間者……勘……間者って本当に江戸時代なの……
桜は、再び握り飯に口をつけたが総司はすっと腰を下ろした。
「ねえ、望月さん。歳がそんなに離れてないでしょう。敬語はずして話してくれて構いませんよ」
「……いや。流石に初対面で敬語を外すのは……。なら敬語外して喋って下さい」
「……私ですか?これは癖なんです」
雰囲気は穏やかなものだ。
これも、総司の気遣いか……性格か……。
蔵に女一人。
牢屋など屯所にはないが、身元不明な人物を易々と部屋にあげるわけにもいかず、総司は口を開きながらも影に視線を落とした。
゛……何故……″
穏やかになるのは何故………。
落ち着くのは何故……。
互いに思うことだ。
出て来た姿に沖田の眉がぐっと寄り、もやもやとしたものがあった。
普通なら、普段なら気にならない筈だった……。
感心などない筈だった…。
だが、桜は見た目は見たこともない服を着用している。
首に付ける金色のネックレスが蝋燭で光り、総司はふっと笑みを漏らした……。
「望月さん……って……寝てしまいましたか……おやすみなさい」
疲れたのか……。
今まで気を張っていたのか……。
座ったままうたた寝をする桜の姿に、総司はそっと布団を掛けると言いたい言葉をそのままに身を翻した。
ガチャン……。
施錠する音が響き、遠ざかる足音は消えていった。
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