▼▼未来からの訪問者▼▼

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「いやあああ!!」 桜は、がばりと上半身を持ち上げた。 「……あの……。大丈夫ですか……」 「……えっ……」 ……何…… 桜は、ゆっくりと顔を向けたが荒々しい桜の息づかいは消えていった。 だが、桜は思わず眉を寄せた。 「……何、幽霊?」 とっさに出た言葉がそれだった。 あっ……死んだんだから幽霊がいて当たり前か ゛幽霊??″ きょとんとしながらもフッと笑みを浮かべる青年は、口を開いた。 「私は幽霊ではありませんよ、ちゃんと足もありますから」 ……本当だ……足がある…… 袴からのぞかせる足を見て、桜は上から下までその青年を見るが、青年は再び足を戻した。 「魘されていましたが大丈夫ですか……。それに、足元の方はすみません。女中の方に軽く手拭いで拭いてもらいましたが寒くはないですか」 「大丈夫です、ご迷惑をおかけしてすみませんでした」 「頭を上げて下さい、大層な事はしていませんから」 深々と頭を下げる桜の姿に、青年は慌てて首を振ったが、桜は頭をあげず布団を凝視していた。 私……死んでない……えっ……なんで手拭い……普通、タオルって言うよね、女中って……此処は宿?なんで宿にいるの ゛考え事ですか……″ 青年は、首を傾げながらも障子を開けた。 「私も色々聞きたい事があるんですけど、目が覚めたら土方さんに連れてこいと言わてるんでついて来てもらって構いませんか?」 「……はい……」 「では私が案内しますからついて来て下さい」 ……土方さん??誰……??えっ……宿の支配人?ここどこ……こんなとこ東京にあったっけ……待って、なんでこの人袴なの?? なんで??私変な男に……でも袴なんか履いてなかった……ロン毛でもなかった…… 混乱する頭。 額にかく汗を拭いながら桜は、青年の後を追いかけていった。
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