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ピピ
ピピピピッ
ピピピピッー…
ガチャー…
手探りでベットの中から彼女は、目覚まし時計を止めた。
「もぉ時間かぁー…起きよ…」
モソモソと起き上がり、桜は煙草に火をつけながらカーテンを開けるが、それもいつもの行動だった。
いつもの光景が目に入る。
高層マンションの最上階から下を見下ろすのは身震いをさせる程、怖いものだが濁る瞳に映るのは光る灯と暗闇の光景。
キラキラと光る店や車の灯。
外は日が沈み、代わりにネオンが辺りを照らしていた。
大都会の東京の中心部…そこに桜は生きている。
建ち並ぶ高層マンション…いつもの見慣れた風景は、なにも変わらない…。
黒のキャミソールの寝間着に下は黒い下着。
部屋は暖房がガンガンだ。
髪の毛をわしゃわしゃと掻く桜は、窓にコツンと額を当てた。
「……だるいな…仕事…」
どっか行きたいな……こんな世界じゃなくて…もっと違う世界に…まぁ無理だけど
何年間も思って来た…何年も…その度に鼻で笑い…馬鹿げていると思う自分もいた…。
閉じきった心の冷たさ…それは額に当たる窓の冷たさに似ていた…。
くしゃりと灰皿に煙草を潰し桜はバスルームに向かった。
部屋の広さ、それは広過ぎる位有り余り…余計な物などなかった…。
黒と白のコントラストの色づかい…それは、まるで自分を映し出す部屋。
黒、それは自分…白は昔の自分…。
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