3399人が本棚に入れています
本棚に追加
「文久……。えっ……」
えっ………なんで…………タイムスリップ…??…えっ……えっ……嘘……
混乱する桜の頭。
冷静に考える事も出来ず、桜は思わず額に手を当てた。
「身元が分からねえもんを部屋に置くことはできねえ。総司、明日近藤さんが帰ってくるまでこいつを蔵に入れておけ」
「蔵になど流石に可哀想でしょう」
総司の反応に、土方は一瞬驚いた様子だったがそれも一瞬の事。
「これは副長命令だ。連れてけ」
「……鬼……」
「あっ?なんつった」
「別に何も言ってませんよ。土方さんの幻聴でしょう」
憎まれ口を叩きながらも、総司は桜の前に方膝をついた。
「行きましょうか……」
……タイムスリップ……嘘でしょ……なんで江戸時代に……蔵ってどこよ……
頭を駆け巡るのは蔵への想像に、総司に続き部屋を出ようとしていた桜だが、何の前触れもなく歩みを止めた。
「帰る場所なんてないんですから、逃げも隠れもしませんよ」
煙管の煙がふわふわと上にのぼる。
ふわふわと……ふわふわと。
「帰る場所がない……か……」
二人が去った後、土方はぽつりと呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!