▼▼未来からの訪問者▼▼

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「寒……」 身を縮ませる桜は、身震いをするように身体を震わせる。 部屋を出た後、総司と会話をする事はなく、桜は蔵の中(拷問部屋の蔵)に案内されていた。 《すみません……》 去り際に総司は一言発して南京錠を閉めたが、蔵独特の暗さは孤独感をより一層感じさせる。 「……本当に蔵……。てか、いま夜??朝??」 ……寝れない……縄とかあるし……あれ、何に使うの…… 自分が発した言葉が辺りに響く。 桜は辺りを見るが、蔵の中は蝋燭が一本立っているだけだ。 思わず身を縮こませ体育座りをしていたが、途端にガタリと扉が開いた。 ……何……えっ…… 思わず桜の背筋が伸びた。 蔵の前に存在するのは、総司だった……。 「……望月さん、寒いでしょう。掛け布団とおにぎり持って来ましたから、よかったら召し上がって下さい」 ……えっ……??なんで…… 総司は、掛け布団とおにぎりを桜の前に置けば、方膝をつけた。 ……おにぎり…… 桜は目の前に置かれた二つのおにぎりと総司を交互に見つめた。 「……もしかして、遠慮されてますか?」 「……いや……。まあ……。これ、本当にもらっても大丈夫なんですか」 「大丈夫ですよ。気にしないで下さい」 ……気にしないでって……でもお腹は空いた…… 空腹は、限界に近い……。 桜は、頭を下げればお握りを口につけた。 ……美味しい……お握りってこんなに美味しかったっけ……いっつもろくな食生活してなかったもんなあ…… 現代での荒んだ生活に、桜は一瞬失笑した。 出前を頼めば、店に食べ物がくる。 歩けば直ぐ近くにコンビニがある。 素材そのままの白い握り飯。 お握りを一口、また一口と食べながら、その間総司は何も言わずその様子を見つめていた。 ……見られてる……食べにくいんだけどこれ監視? それとも親切な人……お握りや蒲団って 「……あの、見ず知らずなのになんで。その間者かもしれないんですよ」 桜の問いに、沖田は宙を仰ぎはじめた。 「……んー……。望月さんは敵ではない……。勘ですけどそう思ったからです」 「……勘……」 「先程も言いましたが、間者が川で溺れるなんてそんなへまはしないでしょうから。勘です」
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