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「いつまでそこに突っ立ってやがんだ、入れ」
「……失礼します……」
土方の声で桜は中へ入ったが、中にいる四人の目線が一斉に桜に向けられる。
……そんなに見ないでよ……そんなに顔が悲惨?
……土方さんに沖田さん……それにさっきの人は山崎さん……あとの二人は……
重苦しい雰囲気の中、ここでも桜は正座をするしかなかった。
「君が望月桜さんかね?」
桜の目の前に座る威厳のありそうな人物が口を開いた。
「……はい……」
「良い名だな、桜と言う名は……。私はこの新撰組の局長を務めている近藤勇という者だが、君の事情はある程度聴かせてもらった」
やっぱり……新撰組………
……教科書に載ってた……お父さんに見せてもらった本に載ってた……
まじまじと近藤を見てしまうぐらい桜の背筋が伸びていく。
過去の光景が、走馬灯のように流れていく。
こま送りに映像が流れ、桜の目が総司に向く。
腕前も逸品ものの近藤は、目尻に皺をつくりながら、一つ頷いた。
「私が気になったのは君が2009年と言ったものなんだが、実に興味深い事を述べる。それはなんだね」
……説明……タイムスリップして来ましたー!なんて誰が信じてくれるの……
私でも信じれないのに……それもそんな雰囲気じゃないし……
このままだったら間違いなく……疑われるよね……もう疑われてるよね……
私日本人だよ……それにこの時代だったら……
切腹……打ち首なの……
痛いのは嫌……痛いのだけは絶対嫌……
痛みに滅法弱い一面もある桜は、思わず顔を引きつらせるが、重苦しい雰囲気の中、口を開いた。
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