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『誠。意味が分かるかな。これも桜には少し難しいかな』
『皆、意志があった。って父さんは思うんだけど、桜はどう思う?
沖田総司、桜は治してあげないとね』
……沖田総司……私……今同じ時代にいる……
心臓が脈をうちはじめ、桜は思わず髪の毛をくしゃりと掴んだ。
『治してあげないとね……』
『……ありがとう……』
……誰……
にっと笑みを漏らす近藤は口を開いた。
「君は行く場所がないはずだが、歳。どうにかならんか」
「どうにかってどうする気だ」
「女禁制だが行く場所がなければ彼女も困るだろう。女中はいっぱいなのか」
「手は足りてる」
近藤と土方のやり取りの中、桜はふと眼鏡をかけた人物に目を向けた。
一向に喋ろうとはしない人物ーー山南は、桜の視線に気づけば目尻を下げながら軽く頭を下げた。
……物腰柔らかい人……きっと山南さん……
桜は会話の中、山南に軽く頭を下げた。
会話は進んでいくが平行線を辿る。
新撰組は女禁制だが、女中も若い娘はおらず、数名のおなごを雇い、時間になればその者は家へと帰って行く。
住み込みの者など女中にはいない。
「ならどうするんですか」
総司が口を開いたが、桜を隊士に身を置くなどももっての他だ。
……なに……流石に此処に都合よくはいれないか……
嫌な雰囲気になりつつ事は感じとれ、桜は軽く頭を下げた。
「あの。すみません、それなら自分でどうにかしますから」
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