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「沖田君。彼女は……」
邸から出てきた山南が言葉をかけるが、桜の姿はない。
二人のやり取りを自然と耳にしていた様子の山南は困惑しながらも沖田の横に寄り添うが、沖田は前方を見据えたままだ。
「……目が疑ってると……。言われました」
「……そうですか」
「人の信用は簡単にえられるものではないと……。保護は監視かと……。間者だったら「正論を言われる方ですね」
「……おにぎりが美味しかったと、質素なものなのに」
どこか寂しげに笑う沖田の横顔に山南は口を閉ざした。
踵を返す沖田の後ろ姿を見つめながら山南は、日が傾きかける空を一度見上げた。
オレンジ色になりつつある空。
山南の心中は沖田同様に、靄をかける。
『半々でしょう』
『よからぬものに巻き込まれてもおかしくはないぞ』
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