▼▼歩む道▼▼

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イライラしながら桜は人目の多い道を避け、現代で言う路地裏のような所を歩いていた。 「なあ……。ちょっとまちいなお嬢さん」 「……えっ…?私?」 不意に後ろから声をかけられた桜は、ゆっくりと振り返るが、そこには、着流しを緩く着こなした背丈のある男が一人。 黒い着流しを纏う体格のいい男は、 笑っているが桜の警戒は嫌でも放つ。 ……誰…… 「あんた異人さんかい?」 「……日本人ですが」 「藩はどこだ」 「……藩?てか藩とか出とかわけわかんない。なんなの本当にさっきから。日本人で東京が生まれなだけでしょ」 「……なに言ってんのかわかんねえが、なに怒ってんだ」 「もう怒りたくもなるしマジで」 「……マジでってなんだ。 身なりも変わって変な言葉使うが、どっちでもいいな……」 なんなのこの人……話が通じないしなんなの……もうわけわかんない 男は喋りながら桜の目の前に立っていた。 身の危険を放つ時、気持ちとは裏腹身体は動かないものだ……。 少しずつ後退りするが、桜は男から目が反らせない状況が続いた。 「……えっ……。っ!!」 腹部に感じる強烈な痛み。 見れば、男の差す刀の鞘が桜の腹部を突いているではないか……。 よろめく桜の身体を、男はとっさに支えるようにしながら、腕を握れば担ぎ上げた。 「わりいなお嬢さん……。あんたは高く売れるよ……」 ……売る……殺されるの…… 遠退く意識の中、その言葉は確かに聞こえた……。 ゛手荒ですまねぇな……急いでんだよ″ 「……早いとこ行かねえと殺される……。張り手は勘弁だ」 小走りに走りだした男の姿は、その場から消えて行った。
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