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『これは、こうやって……。ほら、できた』
……雪だるま……懐かしい……
『おいで。桜』
『ほら、こっちに……』
『おいで』
『来ては駄目ですよ』
……沖田さん……?
「……ん……。痛っ……!」
「……あっ。駄目ですよ!!動いたら」
蒲団から桜は起き上がろうとするが、一人の少女によってそれは止められた。
……お腹痛……誰??
腹部を撫でる桜は、少女を凝視だ。
「……貴方誰……。此所何処……」
「ここは遊郭です。私は名をお沙耶と申します。」
「……お沙耶ちゃん……。遊郭……」
……自分で此所に来たっけ??
周りを見渡す桜は頭にはハテナマークが飛び交うが、その行動がお沙耶のツボにはまったようだ。
お沙耶はフッと笑いながら、軽く頭を下げた。
「色々聞かれたい事があると思いますが、目が覚めたら女将さんを呼んで来るよう言われていますので、詳しいお話は女将さんに聞いてみて下さい」
……女将さん?
頷く桜の姿に、お沙耶は「女将さんを呼んで来ます」と、言いながら部屋を出ていった。
襖は閉じられ、桜はまたもや、きょろきょろと周りを見始めた。
六畳ぐらいの部屋に化粧台と行灯だけがある殺風景とも言える部屋だ。
外は既に朝なのだろう……。
雀が鳴き、小窓の障子に朝日が反射していた。
……遊郭って……此所吉原?島原……?他の所?何処……
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