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「失礼するよ」
その声の後、襖が開き、お沙耶と共に女性が部屋に入って来た。
それは女将と判断できる立ち振舞いをする。40代ぐらいであろう、紫の着物は見栄えが良く、気が強そうな顔立ちに、凛とする人物だ。
その女将は、桜の前に座った。
「気がついたんだね。だいたいの事はあいつから聞いたよ。手荒な真似したみたいだけどすまないね……。体の調子はどおだい」
「……お腹が少し痛いだけで大丈夫です」
「そおかい……。あんたも色々聞きたい事があると思うけど、質問は後で聞くからまずは私の話を聞いてくれるかい」
女将の言葉に桜はゆっくりと頷くと、女将は微笑みながら、ゆっくりと口を開いた。
「まず最初に、ここは京の中でも一、二に大きい島原の美鏡屋(ミカガミヤ)って言う遊郭だ。早く言えば輪違屋や角屋と張る店でね私はこの美鏡屋の女将で゛お蘭″という者。
ここからが問題で、この店で太夫の子が身請けされてね。いなくなったんだよ、それでお職になるぐらいの女を女衒に探してもらってたんだ。
早い話、それであんたが連れてこられたって訳だ。まぁこんなとこだね……。あんたは聞きたい事があるかい?」
「いえ……」
……島原…………それで……あの路地裏で会った人が……
話のつじつまが合い、桜は一人納得していた。
「……私の名前は望月桜と言います。不束者ですがよろしくお願いします」
桜は布団の上で正座し、深々と女将に頭を下げた。
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