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「桜ぁ、おはよ」
店に着いて話かけて来たのは友達のリンだった。
今風の若い金髪の巻き髪。クリクリの人形の様な子は小首を傾げた。
「おはよ、リン」
「桜今月もナンバー1じゃん!!私にもその秘訣教えてほしいよ」
「リンだってナンバー2じゃん、それに秘訣なんてないし」
「桜は可愛いし、それにさぁ…」
ブツブツとその後もリンは一人で何か言っているが桜は無視。
ロッカーに荷物を入れると桜は網タイに脚を通しロッカーを閉めた。
キャミソールに網タイはこの店の定番…全身黒…それも桜のお決まりだった。
「先に待機室行っとくよ」
「分かったぁ」
直ぐに無表情になっていく桜の顔。
リンとは店の中の友達…全く信用していなかった…いゃ、しようとしなかった。
裏切られるから一人が一番楽
桜は扉を開け、部屋に入って行くと首をパキパキと鳴らしながら座った。
「おはよ」
『おはよぉ』
煙草に火を付け…桜は周りに目を流した。
今日は金曜で八人か…
10畳ぐらいの部屋に押し詰められる様に座る女の子…携帯をつつく子…音楽を聞く子…話をする子…様々な子がいる。
桜は吹かす煙草の煙を見つめた。
希薄な関係…
上へと登っていく煙を目で追うが桜は一つ瞬きをした。
後何年この生活が続くかなぁ…
ぼんやりと浮かぶ想像図…三年目になる、この仕事。
背中に当たる壁の冷たさにも慣れたものになり、机の上に置かれた液晶テレビがガヤガヤと耳につき…桜はぼんやりとテレビに目を向けた。
大変だなぁ…皆必死になって…
テレビに映る芸能人に目を向けながら、煙草の灰を灰皿に落とした。
「桜!!新しい付け爪どぉ!?見て!!」
「あぁ…綺麗だね」
どぉでもいぃ…
横に座るリンの爪に光るスカルプを見ながらも桜の心が光る事はなかった…。
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