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「お前の運命を悔い改めるんだ」
右膝を軽く曲げて、腕を後方にひいてから姿勢を低くたもつ。勢いをつけて伸ばされた腕。
そして手刀がモップ頭の左胸に突き立てられた。
獣は目を見開いたままその動きを止めた。
「ウェッジ、完了」
そんな事を決め台詞のように言い放つ。
引き抜いた手には血が着いたわけでもなく、相手に外傷は見られない。
へたり込んでる少年には目もくれず、歩は商店街方面へと足を向けた。
いつの間にか夕闇になり、風の中で草花がなびいている。
サラサラと鳴る草が笑っている様で、達成感からくる微笑みを浮かべる歩を讃えてるようだ。
「初仕事が成功したんだし、一応報告しておくか」
駆の番号を呼び出す歩の手はふるえていた。最初の任務が成功するとは思っていなかったのだろう。
勝利の余韻にひたる歩は、自分分の心音とコールを重ねていた。
しかしその時である。
「いってぇ!?」
突然、後頭部に走った激痛とまぶたの裏に輝いた星たち。
前のめりになりながら、ゆるい傾斜の芝に顔面から倒れこんだ。
さきほどまで称賛してくれていた草たちが、今度は耳元でざわざわとおびえた声で騒ぎだしていた。
半身を起こしながら後ろを振りかえってみると、そこには眉間にシワを寄せながらにらみをきかせるモップ頭。
「な、何だぁ?」
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