第1章 ながい眠り

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 この《楔》と関係するもの達として高崎家がある。  昔から、占いによる予知や予見を得意としていたこの一族。先天的にそれを携えて生きてきた家である。  そんな高崎家の娘、澪菜が、20歳の誕生日まで後半年と迫っていた3月に予見したのである。  過酷な未来を。  それをきっかけに自我を保てなくなり、自分の心を堅くそして深く閉ざしてしまったのだった……  彼女は未だに真っ白な部屋の真っ白なベットに眠り続けている。  そんな運命を何とかしたいと思い、歩は澪菜を取り巻く事態に、何の疑問も持たずに必死になっているのである。  眠り続ける最愛の者を救う。ただそれだけの為に。  澪菜が予見した事。その過程を変えられれば再び目覚めるかもしれない。  そんな淡い期待を抱きながら、己に携わった力を試して見ようとしたのである。  この河原で起こったゴタゴタの中で。 ────。
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