29人が本棚に入れています
本棚に追加
「何だか知らねぇけど、邪魔をするんなら覚悟してもらうぜ」
今度は歩がモップ頭に睨まれるハメとなった。
辺りは完全に夜になっているのだが、モップ頭の金髪はそれは目立っていた。月明かりに映え、輝きを放っている。
鉄橋の上を電車が通り過ぎてゆく。そこからもれる灯りが、2人の男を闇の中に浮かび上がらせては隠すを繰り返す。
顔に降注いでいた白い月明かりも遮られた。
モップ頭は、顔の前で指の間接を鳴らし始める。そのかもし出す威圧感に、歩は苦笑いを隠せない。
蛇ににらまれたかえる。そんな事を思っていると、手に握っていた携帯から、駆の軽い調子の声が聞こえてきた。
「お~いアユム、大丈夫かい? さっきから全然反応がないんだけど?」
先程かけた電話が駆と繋がっていた様だ。
しかし、今電話に出る余裕はないだろう。
仮に会話をしたとしても、この状況が変わるわけではない。
身体を強ばらせるた。モップ頭が攻撃を開始したからだ。
振り下ろされる右手の拳に対して、腰を落とし姿勢を低くする事でかわす。
モップ頭にとっては予想外だったのか、身体を手前にふらつかせた。
「俺は今、イライラしてんだ。誰かを殴らなきゃ気がすまねえんだよ」
餓えたモップ頭は血を欲している様で、ギラギラした瞳を歩に向けている。
何がこの男を、暴力的な行動に駆り立てるのか。
今はとにかく、この男をまいて事無きをえよう。
2度目の攻撃を退けてから、そのまま土手の真っすぐな土の道を走り出した。
夜月が見守る中での逃走劇の始まりだ。
最初のコメントを投稿しよう!