第1章 ながい眠り

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「何だか知らねぇけど、邪魔をするんなら覚悟してもらうぜ」  今度は歩がモップ頭に睨まれるハメとなった。  辺りは完全に夜になっているのだが、モップ頭の金髪はそれは目立っていた。月明かりに映え、輝きを放っている。  鉄橋の上を電車が通り過ぎてゆく。そこからもれる灯りが、2人の男を闇の中に浮かび上がらせては隠すを繰り返す。  顔に降注いでいた白い月明かりも遮られた。  モップ頭は、顔の前で指の間接を鳴らし始める。そのかもし出す威圧感に、歩は苦笑いを隠せない。  蛇ににらまれたかえる。そんな事を思っていると、手に握っていた携帯から、駆の軽い調子の声が聞こえてきた。 「お~いアユム、大丈夫かい? さっきから全然反応がないんだけど?」  先程かけた電話が駆と繋がっていた様だ。  しかし、今電話に出る余裕はないだろう。  仮に会話をしたとしても、この状況が変わるわけではない。  身体を強ばらせるた。モップ頭が攻撃を開始したからだ。  振り下ろされる右手の拳に対して、腰を落とし姿勢を低くする事でかわす。  モップ頭にとっては予想外だったのか、身体を手前にふらつかせた。 「俺は今、イライラしてんだ。誰かを殴らなきゃ気がすまねえんだよ」   餓えたモップ頭は血を欲している様で、ギラギラした瞳を歩に向けている。  何がこの男を、暴力的な行動に駆り立てるのか。  今はとにかく、この男をまいて事無きをえよう。  2度目の攻撃を退けてから、そのまま土手の真っすぐな土の道を走り出した。  夜月が見守る中での逃走劇の始まりだ。
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