第1章 ながい眠り

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 逃走中でも携帯電話から駆の軽い調子の声が聞こえて来るので、歩はイライラが募りだしていた。  終話を押して遮るつもりだったが、 「さっき姉さんに連絡しておいたから、もうすぐそっちに着くと思うよ」  それを聞いて思いとどまる。 相棒が出してくれた助け船のことを知っているのと知っていないのとでは、だいぶ気持ちが違ってくるだろう。  今の自分より確実な力を持った者がやってきてくれる。  そう思っただけで安心出来たのだ。  夜風と同化した様な一体感を感じながら走り続けた。するといつの間にか、鉄橋から反対側の道路までたどりつく。  400メートルはある土手の直線を駆け抜けていた様子は、まさに風というにふさわしかっただろう。  そして夜風は、繁華街にたどり着いたのである。 .
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