第1章 ながい眠り

19/32
前へ
/161ページ
次へ
 力なく伸ばされた澪菜の手を掴む。右手首に触れて、手のひらを自分の両手で包み込む様に握り締めた時、確かな温もりが感じられた。  それは雫の言葉通りまだ命がある証拠だった。  ただ今はそこに心がいないだけ。  自然と震えだした唇の隙間から息がもれる。  歩は俯き目を閉じながら悲痛の感情をこらえていた。 「お前がいない時間なんて、俺には止まってるのと同じなんだよ。だから早く戻って来てくれ」
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加