序章

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 その時は何事もなかったのに。ただ、うさん臭い占いに興じる姿が可愛い。  そんな風にしか思って無かったよ。  だけど、それから数ヶ月が過ぎた頃。  ちょっと体調を崩したお前の見舞いに来ていた日の事だった。  白いベットに力なく腕を、だらんとさせながら横になってるお前がいて。  いつもは、星を包み込んでキラキラ光る宝石みたいだった瞳が、その時には既に陰っていた。 「私たちの未来が見えちゃった……夢の中で」  それから、にわかには信じられない、凄惨な未来を俺に語り始めた。耳を塞ぎたくなるくらいの。  それが自分に降り掛かる運命だなんて。 「私たち、消えちゃうよ……」  未来を語る途中でお前はこらえきれずに、自分自身をどこかへ解き放ち、眠りについてしまった……。  あんなのがお前の最後の言葉なんて、俺は絶対に認めない。  お前にはまだ、明日がある。  まだ、話したい俺の事や、探したいお前の秘密が沢山あるんだ。  俺は誓う。  他の奴らの傷つけても、可能性を奪っても、必ずお前を救うと。  その可能性を得る為に、《時の楔》を使ってやる。
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