春も夏も

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夏のわりには爽やかな陽射し、風があるのも良いな、 心地よい。 「今日は、調子いいよ」 朝の透きとおった声で言う、 自分に言ったんじゃない あんまり気持ち良くて、慣れないあたたかさを誰かに教えたかっただけ。 振り返る。 たったワンルームの向こうは、どうしようもなく 遠くにみえた 可笑しいな。 さっきまでみていた空の広さからしたら、なんでもない距離のはずだ それが遠い、だなんて 笑む。 あ、久々笑ったな、 フロアのまんなかに座りこむ。 空色になった風鈴に目一杯ぶつかりながら、 空のかたわれがぼくのまわりを囲む。 「わぁ、あったかぁい」 風に声をのせて、 ぼくも 風にのって。 ‐さて、皆様、夏ですよ あったかいですか? なに、暑い? 暑いのは、いっぱい着込んでるからじゃない? そんなの脱いじゃえば あったかいですよ‐
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