タナトス

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私たちはこんな話しを耳にした。 「ねぇねぇ!タナトスって知ってる!?」 この言葉は不気味に私たちの心を揺さぶってきた。 まるで心臓を今にも押しつぶされてしまうような、まるで喉元に冷たく重い鎌を押しつけられているような…。 そんな不気味さを持った『タナトス』という言葉、その時の私たちにはどんな意味を持った言葉なのか全くわからなかった。 「知らない」 私はただ一言そう言って。 「タナトスって何なの?教えて」 と、無意識のうちに私は友達の百合子に訊ねた。 「タナトスってね、深夜00:00分から00時01分になる前に、10回口にすると死んじゃう言葉なんだって」 その『死んじゃう』なんて言葉は学校で流行るような怖い話しにはつき物だった。 だから私たちはまた同じようなふざけた迷信、流行りの七不思議みたいなものだと思っていた。 「あ!タナトスは、家の鏡の前で言わないといけないらしいの…だから私あんまり怖いから試せないでいるんだけど…今度みんなでお泊まりしてタナトス試してみない?」 私たちはただ遊び半分、しかもお泊まりでみんな一緒にということが怖いという感情を薄れさせていたのだ。 そう、この時に私たちはタナトスに触れないでおくべきだったのだと後悔することになった。
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