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たしか、高等部からは男女別々で男子校・女子校となるはずだ。それなら別に女子の目を気にしなくてもすむ。
ただの真面目地味キャラでいれば、男子なんて面白味が無ければ寄っては来ない。
たまーに、そーゆーのを面白がる馬鹿な奴もいるケドな。
今まで被っていたフードを取り、俺が黒いカツラを被ろうとしていると、叔父さんが俺の髪に触れてきた。
優しく撫でるから気持ち良くって、目を細めてしまう。よく猫みたいだと言われるのはその所為だろうか?
「…髪の毛、触っていーい?」
「…今更、もう触ってんじゃん」
「ふふっ…ありがとう。相変わらず綺麗な碧い髪と…藍色の瞳…姉さんと同じだ」
“姉さん”とは、俺の母さんの事。もうこの世にはいない。俺を産んで、死んだ。
自分の命よりも、俺の命を選んだんだ。母さんの顔は写真でしか知らない…。
この髪と瞳の色は、母さんと同じ色。生まれた時から碧い髪色で、藍色の瞳だ。
俺に唯一残された、母さんの形見。
でも、父さんや叔父さん、今の母さんから俺の母さんの話はいっぱい聞いた。
とても優しい、とても愛されていた人なんだってわかった。今の母さんは俺の本当の母さんの妹。
叔父さんのもう一人の姉さん。とても優しい、大好きな母さんだよ。
「叔父さん、いい加減手離して。くすぐったい」
「あ、うん。ありがとう」
こうやって、すぐ笑って『ありがとう』という叔父さんはとても好きだ。
しかし、叔父さんはいつまでたっても童顔だな。笑うと、とても幼い顔つきになってしまう。
コンプレックスらしいから言わないでおこう。
「よしっ…と。どお?叔父さん」
黒いカツラに黒縁のビン底メガネ。目指すは優等生地味キャラ。我ながらいい感じのダサキャラ。
「うわぁー…だいぶ変わるね」
「へへっ」
ニヘッと笑うと、口に手をあてて横を向く叔父さん。ん?どうしたんだ?
「いや…か、隠せてないモノも…あるね…///」
ボソッと言った糞叔父の言葉が聞こえなかったので、とりあえずスルーしておこう。
「あ」と言う間抜けな声。叔父さんが何か思い出したらしい。大丈夫か?もう歳か?
「今日はもう一つたぁーくんに言わなきゃいけない事があったんだった♪」
…何やら嫌な予感。とってもとーっても嫌な予感。
考えている側から、災難到来。理事長室の大きな扉が小さく二回鳴った。
「あっ、ちょうど来たみたいだね。どーぞ」
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