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いきなり低い声で呼ばれてびっくりした。
顔を上げれば、黒髪仏頂面がこっちを見ていた。
え、俺?!…だよね?
じーっと見つめてくる黒髪に少々どきどきしながらも聞いてみた。
「え、と…僕ですよね?…何ですか?」
「…入らないのか?」
「え?」
よく見れば、黒髪は開けたドアの側に立ち、ドアを足で止めている。
…あぁ、俺が入るのを待ってたのか。
あとの二人は先に入ってしまっているようなので、そう考えるのが普通だろう。
コイツ案外いい奴なのかもしれない。
そう考えると、少し嬉しくなった。
「ありがとう」
そう言ってニコッと笑うと、一瞬細い目を見開いて、次には眉間にしわができていた。
まるで怒っているかのようだ。俺、何か悪い事したかっ?!
またもどきどきしつつ黒髪の横を通り過ぎ、中に入った俺はまた驚愕…したがすぐ復活した。
…もう驚くのはやめよう…疲れた。面倒くさい。
あ、そうだ!寮と思うからビックリするんだ。家って思えば、まだこっちの方がいいじゃんか。
うん、そうしようそうしよう。
そんなアホな考えでなんとか現実から目を背けリビングに入ると、先に入った二人がソファーに座っていた。
赤髪に目で座るように促されたので、仕方なく俺もソファーに腰を落とす。
正面のソファーに座っていた金髪がぴょんっと俺の横に移ってきて、俺の右隣には金髪、正面のソファーには赤髪と黒髪が座った。
三人の目線が俺に集まるが、誰も何も言わず、ただソファーに座っている俺をなめ回すようにじろじろ見ている。
な、なんだよっ!誰か何か言えよっ!
沈黙に困った俺は、一番近くにいた金髪に目線を送ると、ばっちり目が合ってしまった。
ぱっと目を逸らすが、にっこりと笑った金髪はぎゅっと俺に抱きついてきた。
金髪の行動の意図がわからず、は?と怪訝な顔をすると、上目遣いで再び笑顔を送られた。
金髪と俺の顔の距離、約15cm。
近すぎて目を逸らす事ができない。
どうする事もできずにいると、左手で腰を撫で回され、右手で太ももを撫でられる。
そして最後に上目遣い。
ぺろりと自身の赤い唇を舐め、薄い唇を開く。
「…ねえ、どうしてほしい?」
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