―目的―第二章

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あれだけは、あれだけが気になって仕方が無い。俺が渋々この学園に戻って来たのはそのためだった。 叔父さんに視線を送り、わかるでしょ?と眉をひそめると、眉をハの字にして溜息をひとつ。 「やっぱりあの頑固たぁーくんが大人しく学園に戻ってきたのは、それが原因かぁ」 当然、というように腕と足を組んでソファーに背中を埋める。まるで我儘な子供のようだ。 こんな態度が取れるのは叔父さんの前だからであって、俺が心を許している証拠。 分かりにくいかも知れないが、叔父さんはそんな俺の態度を嬉しく思ってくれている。 いつも口に出して言わなければと思うのだけれど、先に叔父さんが俺の気持ちを読み取ってしまうため、なかなか口に出して言う機会に恵まれない。 はぁ、と溜息をつくと、話の催促だと思ったらしい叔父さんは言い難そうに話し始めた。 「…たぁーくんがこの学園を出て二ヶ月、被害者が続出しているよ」 これを見て、と渡されたのは校内新聞だった。 大きく見出しを飾るのは俺が今もっとも見たくなくて、もっとも気になっていた二文字の漢字。 『強姦(ゴウカン)』 一瞬、自身でも分かるほど瞳が揺れた。慌てて表情を戻すが、叔父さんに新聞を取られてしまった。 どうやら俺の代わりに新聞を読み上げてくれる様だ。 「『増え続ける強姦事件の被害者!生徒会もとうとう動き出したが、なかなか苦戦している様子。我らが闇猫は現れてくれないのだろうか。野良猫はやはり気まぐれなのだろうか。被害者生徒が口を揃えて言う、僕らは闇猫を待っているよ、と。』…これが今の状況。この新聞あげるから細かい事はあとで読んでね」 「…ん、ありがとう。生徒会、とうとう動き出したんだね」 「うん。流石に放っておけないほど大きな問題になっちゃったからね」 こんなに大きく新聞に取り上げられているんだもんな。生徒の信頼を無くしちゃいけないし、動かざる負えなかったんだろう。 もう一度、新聞内のどの文字よりも大きく書かれている二文字を見て、頭に焼き付けるように目を瞑った。 「で、どうするの闇猫さん?」 闇猫。ずいぶんと懐かしく感じるその言葉。 三年ほど前から、中・高等部の強姦事件を鎮圧してきた者の通り名だった。 闇と化した校内を脅かす鼠共を駆除するために現れた、勇ましく、優美な野良猫。 それが闇猫。 「愚問。俺はそのためにこんな学園に戻って来たんだからな」 それが、―――俺だ。 .
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