927人が本棚に入れています
本棚に追加
意思を強く固め、有無を言わせない視線を突き付ける。
やめろって言われたってやめるものか。
確かに危ない事をやっていることは百も承知だ。
だけど、だからと言って目を逸らす事なんて俺にはできない。
俺だからこそ、できない。
そんな俺の我儘な考えを、叔父さんは俺が何も言わなくたって読み取ってくれる。
お願い、ごめんなさい。
「僕がなんて言ったって、頑固なたぁーくんは言う事聞いてくれないもんね」
愛おしそうに目を細め、ふぅと溜息を付く。
どこまでも優しくて、俺に甘い叔父さん。
そんな叔父さんの優しさに付け込んで、俺はどこまでも寄りかかってしまう。
本当に、ごめんなさい。
「ほらほら、しゅんとしない。さっきの威勢はどこに行ったの?」
「うん。そうだね、ありがとう」
「ずっきゅんっ!」
にへっと笑って見せれば、なんだかよくわからない言葉と同時に俺に抱きついてくる。
いつの間に俺の横に来たのだろうか。
「ああぁっ!久々のたぁーくんのエンジェルスマイルっ!可愛いったら可愛い!」
「意味分かんねぇーし。暑苦しいから離れてよ」
「クーラーガンガンだから暑くないよっ!」
いや、お前の意見は聞いてねーよ。
むぎゅむぎゅと、そりゃあもうクマの人形を抱きしめているかの様にしつこく抱きしめてくる。
暑い、というより、苦しい。
反抗する事さえ面倒臭くなってしまった俺は、もうなされるがままといった状態だ。
「そういえばたぁーくん」
「何」
「うわぁ、なんか冷たいね」
「だから何って」
「あぁ、うん。えーと、新しい部屋はどうだった?」
「もう最悪!」
「あー…そうですか」
最悪過ぎて昨日はあまり寝ていない。
それほど最悪だったのだ。
昨日、廊下に出て最奥の部屋が俺の部屋だと言われ、あの独特な三人の空間に居る事も嫌だったので、渋々部屋へと足を進めた。
正直、内心少し期待もしていた。
普通の部屋ってどんなのなのだろう、と。
たかが学園寮、それほどたいした事は無いだろうと思っていたのだ。
中等部の頃は寮に入れて貰えなかったので、期待半分不安半分でわくわくしながらドアノブをゆっくり開けた…のだが。
.
最初のコメントを投稿しよう!