927人が本棚に入れています
本棚に追加
「うわぁー…」
もう、本当に最悪。
目の前に広がるのはほぼ白で統一されたプリンセスルーム。
そう、あのおとぎ話のお姫様特別部屋。
こういう趣味の持ち主ならば目眩がして、素敵、と言うのだろうが、俺は違う意味で目眩を起こした。
慌てて部屋の中を見て回ると、天蓋付きベッドに猫足付きバスタブ、金の蛇口、大きな丸鏡のドレッサー、シャンデリアなどなど。
貧血を起こしそうになったのは言うまでも無い。
なんっなんだっ!これはっ!
どこのお嬢様部屋だっ!
ここはたしか男子校だったよな?
だったよな?!
頭を抱え、盛大な溜息を吐く。
時計を見ればすでに夕方だった。
いっけねぇ、こんな事してる場合じゃねぇよな。
この部屋の事に関しては明日叔父さんを問い詰める事にして、とりあえず荷物を片付けよう。
ぶんぶんと頭を振り、目の前の現状にいろいろ突っ込みどころあるけれど、とりあえず後回しにする。
早速明日から学園生活が始まるって言うのに、荷物も何もかも箱詰めされたままだ。
業者の方が、荷物等は私達が片付けておきますね、と笑顔で言ってきたのだが、俺が全力で拒否したのでこの有様だ。
いや、だって他人に荷物を勝手に漁られるのって嫌だろ?
まあ、金持ち坊ちゃん達は違うのかも知れないけどさ。
って俺もその内の一人か。
とにかくなんだか嫌だったんだ!
でも今思えば、とくにたいした荷物も無かったし、勝手に片付けて貰えばよかった…。
あー、面倒臭い。
ばふん、と天蓋付きベットに倒れこむ。
さすがお嬢様専用ベット、めちゃくちゃ寝心地良いな。
天蓋を除けばの話だけれど。
くるり仰向けになり、天蓋を見上げながらこれからの事について考えていた。
闇猫のことと、今日エントランスホールでチラッと見えた気になるもの。
あれは、もしかしたら―――…
そんなことをごたごた考えていたらすでに夜中の三時だった。
.
最初のコメントを投稿しよう!