―目的―第二章

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「アンタ誰だよ」 「あぁ?こいつ、口悪いな」 俺の頬をびよーんと伸ばしてくるホスト野郎。 んの、野郎っ! バシンとホスト野郎の手を叩き、んべっと舌を出す。 「てんめぇー…」 「ふんっ」 「ああ、もう!喧嘩しないのっ!ひな少し落ち着け!そしてたぁーくんも口が悪い!」 それまであわあわと見ていた叔父さんが漸く口を挟んだ。だからコイツ誰だって。 イライラしている俺の怒りの矛先は、叔父さんへと方向を変えた。 「だからこの人誰っ!」 「あれ?覚えてないの?」 「覚えて無いから言ってんの!」 「そ、そうだね。この人は」 「黒澤ひなり(クロサワヒナリ)、ここの英語教師を務めている。樹とは幼馴染だ」 叔父さんが言うよりも先にホスト野郎、いや、黒澤ひなりは言う。 あー。待てよ? どっかで聞いたと思っていたけど、まさか、まさかあの! 「ひなちゃん!」 「ひなちゃん言うな!」 やっぱりこの反応はひなちゃんだ! 昔よく遊んで貰っていたのを思い出した! 一番印象深い初対面の時のこのやり取り。 七歳の俺に「ひなちゃん」と言われ、顔を真っ赤にして怒鳴られたのをよく覚えている。 結局その後、俺が「ひなちゃん」と言うのを止めた事は無かった。 思い出した事への嬉しさと、久々のやり取りににやにやしていると、大きな溜息をつくひなちゃん。 「よーくわかった!確かにコイツは樹の甥っ子だ!あの糞竜平だ!」 「うわっ、ひでぇー。ひなちゃん大人げなーいっ」 「そうだよ、ひな!たぁーくんは糞じゃないよっ!」 「お前は黙ってろうるせぇ」 「うわーんっ!ひながいじめるーっ」 俺をぎゅっと抱きしめ、うわーんと泣く叔父さん。 ちょ、叔父さんやめて。 俺が睨まれてるから。 「相変わらずだね、ひなちゃん。昔もよく俺に対して殺気を放ってたなぁ」 「黙れマセガキ」 ひなちゃんは叔父さんが好き。 それは七歳の俺がすぐ気がついた事だった。 そんな恥ずかしい事を七歳児に勘付かれたとなれば、大層ショックだったろう。 「ところで竜平、お前髪染めたのか?ゲームのし過ぎで視力落ちたのか?」 「ん、ああ!そうだったそうだった」 .
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