927人が本棚に入れています
本棚に追加
それで俺だと分からなかったのか。
結構軽いカツラに、昨日からかけているので気にならなくなったビン底メガネ。
慣れって恐ろしいな。
ズルリとカツラを取り、メガネを外し、にっとひなちゃんを見上げる。
「久しぶりっ」
「おう、久しぶり」
ぐしゃぐしゃと俺の頭を撫で、にやにやと笑うひなちゃん。
なんだかんだ言って、俺等は仲が良いんだ。
「久しぶりって言っても、俺はよくお前の話を聞いているから、特に久しぶりって感じはしねぇーな」
「俺、ひなちゃんが学園の教師になったなんて知らなかった!しかも英語教師!」
「今年就任したからな。ちなみにお前の担任だ」
「新任!しかも俺の担任!すげぇーっ!よろしく!」
「おう、よろしく」
わいわいと騒いでいると、後ろから叔父さんがカツラを被せてくる。
「うわっぷ」
「ほらほら、後は行きながら話しなさい。急がないとHRに間に合わないよ?」
ついでにビン底メガネもかけてくれる。
ありがとうと言おうと思い叔父さんを振り返るが、その表情はなんとも言えないもので。
ああ、なるほど。
可愛いな、叔父さん。
「んじゃあ、行ってきます!」
「はい、鞄。気をつけてね」
「うんっ」
「どこの親子の会話だ」
親子ごっこを始めた俺たちに、ひなちゃんは苦笑を漏らす。
別にいいじゃん!
「あ、たぁーくん!」
「なになに?」
「活動再開するんだったら、ちゃんと“あの子達”に言うんだよ?」
「あー…はいはい、りょーかいりょーかい」
「こら、目を見て言いなさい」
「じゃあね、叔父さん」
「じゃあな、樹」
「うん、またね」
眉を寄せて溜息をつきながらにこにこと手を振る叔父さん。
ちゃんと仕事してね?
「あの子達って?」
「ひなちゃんは気にしなくていいの」
「さいですか」
.
最初のコメントを投稿しよう!