―目的―第二章

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それで俺だと分からなかったのか。 結構軽いカツラに、昨日からかけているので気にならなくなったビン底メガネ。 慣れって恐ろしいな。 ズルリとカツラを取り、メガネを外し、にっとひなちゃんを見上げる。 「久しぶりっ」 「おう、久しぶり」 ぐしゃぐしゃと俺の頭を撫で、にやにやと笑うひなちゃん。 なんだかんだ言って、俺等は仲が良いんだ。 「久しぶりって言っても、俺はよくお前の話を聞いているから、特に久しぶりって感じはしねぇーな」 「俺、ひなちゃんが学園の教師になったなんて知らなかった!しかも英語教師!」 「今年就任したからな。ちなみにお前の担任だ」 「新任!しかも俺の担任!すげぇーっ!よろしく!」 「おう、よろしく」 わいわいと騒いでいると、後ろから叔父さんがカツラを被せてくる。 「うわっぷ」 「ほらほら、後は行きながら話しなさい。急がないとHRに間に合わないよ?」 ついでにビン底メガネもかけてくれる。 ありがとうと言おうと思い叔父さんを振り返るが、その表情はなんとも言えないもので。 ああ、なるほど。 可愛いな、叔父さん。 「んじゃあ、行ってきます!」 「はい、鞄。気をつけてね」 「うんっ」 「どこの親子の会話だ」 親子ごっこを始めた俺たちに、ひなちゃんは苦笑を漏らす。 別にいいじゃん! 「あ、たぁーくん!」 「なになに?」 「活動再開するんだったら、ちゃんと“あの子達”に言うんだよ?」 「あー…はいはい、りょーかいりょーかい」 「こら、目を見て言いなさい」 「じゃあね、叔父さん」 「じゃあな、樹」 「うん、またね」 眉を寄せて溜息をつきながらにこにこと手を振る叔父さん。 ちゃんと仕事してね? 「あの子達って?」 「ひなちゃんは気にしなくていいの」 「さいですか」 .
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