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―おめつけ役、就任―第一章
「あ、ふあぁぁ――っ」
盛大にあくびをする少年は静かな赤絨毯の廊下を歩く。
学園の中だというのに高級感あふれる造りがなんとも言えない。
あほらしくて、さっきからあくびばかりが出てくる。
普通ならばここで「すごーい」と言うのだろうが、生憎俺はこういうのをあまり好まない。
大体、真っ赤な絨毯なんて敷く意味あんのかよ。
そこの窓に天使の硝子細工なんて置く意味あんのかよ。
理事長のためだけにこの階丸ごと使う意味あんのかよーっ!
そんな文句を悶々と頭の中で叫んでいると、いつのまにか理事長室の前。
やっとついたのか…。
常識的かつシンプルな二回ノックをしてから入室する。
たとえこの中に身内が居ようが居まいが目上の者に礼儀正しくするのは当然だろう?
「失礼します。本日本校に転校してき」
「たぁぁあ――――――くぅ―んっ!」
「寄るな糞叔父ッ」
「ンゲッ!」
すかさず相手の腹に鉄拳を打ち込む。
おしっ!みぞおちクリーンヒットッ☆
「…ッ!!ゲホッッ…ちょ、たぁーくん…酷い…」
「あー、すみません理事長。さすがにガッツポーズは大人気なかったですよね」
「謝るとこそこじゃないよね?!それにそんな他人行儀じゃなくって、樹お、じ、さ、ま☆ってよんぐぇっ」
ぐりぐりと叔父を踏みつける甥の姿はなんとも酷い。
理事長こと、この俺の足元の叔父さんは、ここ“城蘭学園”の理事長、泉樹(イズミイツキ)。
たとえ身内と言っても立場上「先生」だから、敬語は欠かさないつもりだ。
敬語は。
そして、叔父を踏みつける俺、泉竜平(イズミタッペイ)。
この春、めでたく高校デビューをした俺だったが、2ヶ月ちょいでこの学園の高等部に転校させられてしまった。
その事に関して俺はひどく怒っている訳で、こうして復讐…否、事情を聞きにきたのだ。
叔父踏みにも飽きた俺は、ボスッとソファーに腰を沈めた。
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