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「んでっ?何でまたこの学園に引き戻したんだですか?糞叔父」
「まったく…次期社長である方がなんて言葉使いを…それ敬語なの?」
「俺は父さんの会社を継ぐつもりはないって言っただろです?そして敬語です」
「無理やりだね…あ、ミルクティーでいい?」
「あ、うん!俺、叔父さんが淹れるミルクティー大好きっ!」
「ははっ…うん、ちょっと待ってな。それと、いい加減フード取ったら?」
フードを被っている俺の頭にポンと手を乗せると、奥の部屋へと消えていった。
ここが密室空間で、叔父さん以外誰も見ていないだとしてもフードは外したくない。
最近はずっと被りっぱなしだったし。
さて、今のうちに説明しておこう。
俺の父さんは、泉グループの現社長であらせられる。
泉グループとは?
泉財閥が経営・運営する全ての企業、そしてその系列企業、更にそれらの子会社のすべてを含めた呼び名とでも言おうか。
ちなみにここの学園もその一部。
それでは、泉財閥とは?
世界でも通用する最強の財閥と言っておこう。
主に私生活に密着した製品を造り、国民の生活を支える…俺が言うのも変な話だが、由緒正しき大財閥だ。
そのすべての頂点に只今君臨しているのが、俺の父さん。
父さんは二十代という、とても若い内に社長の座に就いた。
周りの連中に馬鹿にされながらも、父さんは見事に頂点に登り詰めた。
そんな社長息子の俺は、次期社長候補とされている、が。
俺はそんなものを継ぐ気は毛頭無い。もちろん、父さんを尊敬していないわけではない。
むしろ大尊敬しているさ!
だけど…俺は普通に生きたいんだ。
無意識に歯を食いしばり眉間に皺を寄せていると、頭に何かがあたった気がした。
びっくりして顔を上げると、叔父さんの顔があった。
「難しい顔をしているね。そんな顔はしないで」
そう優しく言った叔父さんは、俺の眉間に人差し指を置き、ぐりぐりと押し付けてくる。
…楽しそうな顔がムカつく。
「やめろ糞叔父。それより早く説明しやがれ」
パシッと手を叩いて、テーブルに置いてあったミルクティーに手を伸ばす。
あ、やっぱり叔父さんの淹れたミルクティー美味しい…。
「ふふっ…たぁーくんはミルクティー大好きだもんねー」
「チッ、早くしろよ」
「はいっ!」
スパッと不機嫌そうに言うと、背筋をピンと伸ばして向かいのソァーに座った。
早く話せよ。
苛々するな…けど紅茶は美味しい。
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