―おめつけ役、就任―第一章

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「何やってるのー?」 「ぐずぐずしてんなノロマ。行くぜ」 ノ、ノロマ?! 俺の横で目線を合わせて心配顔をする金髪に比べて、赤髪はやはり俺様ヤロウだったらしい。 俺様中心で当然、という顔をしてスタスタ歩き出す赤髪…腹が立つ。 別に俺はお前達について行くつもりはこれっぽっちも無いっつーのっ! なんでそんな偉そうなんだっ! わなわなと手を震わせ怒鳴ろうとした瞬間、ぐいっと腕を引っ張られる。 「うおっ?!」 「ほらっ、早く行こうよ!」 ついて行くつもりなんてさらさら無いんだが?! しかし俺の意見は通らず、ほぼ連行されるかのごとくずるずると引っ張られる。 この金髪見た目に似合わず力が強いらしい…。 手首をぎりぎりと締め付けられて痛いっての。 自分で歩くから早く離せっ! 金髪に歩調を合わせ、自分で歩き出すとぱっと手を離してくれた。 むっとして金髪を見ると、にこっと笑顔を返される。 …コイツ性格悪いな。あまり仲良くはなりたくない。 しかし俺だけむっとしているのも癪に障るので、仕返しとばかりに愛想良く笑顔をつくってみた。 「はじめまして、竜平君?」 「…はじめまして」 「ふふっ、さっきはごめんねぇ?陸ってばいつもあんな感じなんだぁ」 「あぁ、いえ別に気にしてまいせんよ」 「慣れれば気にならなくもなるかもだから、頑張ってねっ」 それはどっちなんだろうか。 まず慣れたくないと思う。 さっそくキャラをつくり、目指すは優等生地味キャラ。 敬語を使う事に苦は感じないが、話している相手に苦を感じてしまう。 同じ歳なのかはたまた年上なのかは知らないが、この身長と声で15歳以上なのは詐欺だ。 さっきから調子が狂い、笑顔が引きつりそうだ。 「はーいっ!とうちゃーくっ!」 どこから来たのか知らないが、真っ黒なリムジンに乗せられ十数分。 到着と言われたので車から降りると、目の前にそびえ立つのは…高級ホテル? しかし、入口のトコには“城蘭学園高等学校寮” …長げぇーよ。 いや、名前なんてどうでもいいや。 それより本当にこれは寮なのか? 「ふふっ、やっぱりビックリするよねっ!中等部の寮とは比べモノにならないよねぇ」 キラキラ笑顔で聞いてくる金髪からは花か何か飛んできそう。 ずれ掛けたメガネを掛け直し、俺も負けじと笑顔で対抗してみる。 「いえ、僕は今日から転校してきたんです。この学園は初めてですよ」 .
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