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居室を回っていると、ある利用者が口を開く
「ここは、どこですか?」
その言葉に私はいつも心苦しくなる
それに答えた後、どんな質問がくるか嫌というほど理解しているから
それでも、答えるしかない
だから、苦し紛れに施設名ではなく地名を答える
「ここは、○○ですよ」
そう答えて、心の中で身構える
次の質問に表情を崩さない様に
だって、この次に発せられる質問は---
「いつ、うちに帰れるん?迎えに来てくれるんかな?」
ほぼ必ず、この質問が投げつけられる
「……ごめんなさい、私はそれ知らないんです」
私の返答に「そうなん?」と一言返す
その姿を見ながら、私はただ心の中で謝罪する
『ごめんなさい、本当は知ってるんだ……
もう帰れないって事……』
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