退屈

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アフロディは自慢の美しい金髪をくるくると指で弄りながら、もの憂げに遠くを見つめている。 「円堂君に会いたいなぁ」 形の良い唇が紡ぐ言葉は俺を絶望させる。 人の気持ちに敏感なアフロディは俺が彼に対して抱いている感情に気づいているだろう。 俺が傷つくと知っていてそんな言葉を口にする。 とてもずるい男だ。 俺がしばし無言でいると彼は突然立ち上がり、近づいてきた。顔を上げると中性的な整った美貌がすぐそこにあった。 「なんだ?」 「キスしていいよ」 丸く大きな吊り上がった挑発的な瞳は真っ直ぐに俺を捉える。 動揺しているとそれを見透かすかのようにアフロディは口角を吊り上げた。 「どうしたんだい?僕のこと好きじゃないのかい?」 「…っ」 言葉につまる。 好きか嫌いか聞かれたら好きに決まっている。 キスだってしたくない訳ではない。 挑発にのってしまってはいけないと頭ではわかっている。 「僕、1回男としてみたかったんだ」 その言葉がまた俺を突き落とす。 俺は只の実験台だ。 アフロディの周りに女なんて腐る程いる。 キスどころか情事だって簡単にやってのけるだろう。 俺は只利用されてるだけなのだ。 アフロディを見つめるとおいでよ、という様に目で訴えかけてくる。 意を決して唇を押し当てるとふにっとした柔らかい感触が唇を伝う。 名残惜しげに唇を離すとアフロディは微かに頬を火照らせ艶っぽく言った。 「ヘラってキス下手なんだね」 「…うるさい」 「うーん、ヘラと付き合ってみるのも悪くないかな」 その言葉は俺を期待させる。 でもそこまで俺も馬鹿じゃない。 俺はアフロディの退屈しのぎの道具にすぎない。 アフロディは俺を好きな訳じゃあない。 「好きになってあげるよ」 歌うように紡がれるその言葉に期待して何が悪い。 まるで女神のように微笑を浮かべる少年に見とれて何が悪い。形だけでも構わない。 俺達はとうに狂ってしまっているのだから。 もう少し神の遊びに付き合ってみるのも悪くない。
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