所詮叶わないと知っていても

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「随分と長いトイレだな」 「ああ、ちょっとな」 「烈斗とこうして二人で話すのも久しぶりだね」 「そうだな」 「流の件で忙しかったもんね」 流の名前が礼文の口から出た途端、高ぶっていた心が冷めた。 ああ、と相槌を打ち、話を聞いているようなふりをしたが礼文の声は右から左へと流れていく。 さっきまで動揺していたのが嘘かのように俺は落ち着き払っていた。 「礼文。お前は流がいなくなって平気なのかよ」 一番聞きたかったことを聞いた。 礼文は驚いたように目を丸くした。 「大丈夫だよ。それに僕は流に口だしする権利はないよ」 「でも…っ」 「僕は!僕は平気だよ。ほら!こんなに元気なんだから」 礼文は力こぶを作り、ほら!と言ってみせるが、その笑顔は一目でわかるほどに引き攣っていた。 「礼文…」 「大丈夫だから…」 そう言う礼文の目には涙が溜まっていた。 ずっと溜め込んでいた分が溢れたのだろう。 俺は礼文の頭を撫でてやることも、 胸を貸してやることも、 抱きしめてやることも、 涙を拭いてやることも、 慰めの言葉をかけてやることすらできなかった。 俺はただたた礼文の泣いてる姿を見つめていた。 泣き顔も可愛いなどと思ってしまう俺は救いようのない大馬鹿者だ。
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