目覚まし電話は恋の始まり

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プルルル、プルルル。 毎朝欠かさず鳴る電話の音で目が覚める。 ふぁっと欠伸をし、携帯を手にとり通話ボタンを押す。 「…もしもし」 「おはよう、改。起きる時間だぞ」 毎日、毎朝聞き慣れた声だけど、これを聞くと一瞬で目が覚める。 それと同時に胸が高鳴る。 改、と名前を呼ばれる度に心臓が脈打つ。 「おはようございます!キャプテン!」 「元気だな」 「はい!今日も朝練がんばります!」 「その意気だ。じゃ、また学校でな」 プツッと電話が切れる。 そんなに早く切らなくてもと思いつつ、俺は名残惜しげに電話のツー、ツーという音を聞いていた。 1分程しか話さないけれど、すごく幸せなひと時だった。 学校に着き、部室に入るとそこにはキャプテンの姿があった。 二人きりだった。 「キ、キャプテン。おはようございます!」 「おう。さっきぶりだな」 キャプテンのモーニングコールで目覚めたと思うと気恥ずかしくなってくる。 しかもそれを話題に出されると嬉しさを隠せない。 「いつもありがとうございます」 「気にするな」 キャプテンはそう言って、俺の頭を撫で、髪をくしゃっとした。 突然のその行為に嬉しくも恥ずかしくあり、紅潮していく頬を隠す様に俯く。 するとキャプテンはどうした?と顔を覗き込んできて、俺の頬はますます赤くなり、まるで林檎のようだった。 「顔が赤いぞ。熱でもあるのか?」 ひんやりとした感覚が突然頬に伝わり、驚いて目をやると、そこには大きな骨張った手があった。 「…きです」 「ん?」 「好きです」 ずっと言わないで心にしまっておくつもりだったのに告白してしまい、今更後悔して、怖くてキャプテンの顔が見れなくなった。 目を丸くして引いているキャプテンの顔が容易に目に浮かぶ。 ああもうおしまいだ、と思った時。 「改、顔をあげろ」 「嫌です…」 「なんでだ?」 「…だって絶対引いてるでしょう?きもいやつだって…」 キャプテンがそんなこと思わないことはわかっていてもついつい思ってもいないことが口をついて出てしまった。 「引くわけないだろう。ほら、俺の顔を見てみろ」 キャプテンはやれやれ、という様にふうと溜息をつき、俺の顔を上に向かせた。 すると、キャプテンの笑顔がそこにあった。
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