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序章
ソレが視界に入ったとき、人間
――否、最早人すら呼べない程に原型を留めていない奇妙なモノで、薄茶の包帯は原色が分からぬほど赤黒い血で纏われ、刹那、血達磨の姿に変化する――
そういう不思議なモノ達が、私の脳内で蠢く。
現実に戻った時には、ソレが気色の悪いものだと判断する。
いつからだろうか。
私が負の感情を幻覚でしか判断できなくなってしまったのは。
反射的に最初は体が震え負の感情を訴えるのだが、心の方はお留守だ。
刹那、青白い血まみれの女が視界に飛び出してきたことで私は恐ろしい幻覚を瞬時に手放し、自分の口と気分をおさえる。
……これは『寂しい』の感情なのか。
そう思い私は自分の机に向かって縦長の薄紙に願い事のように書きなぐった。
『私に人間性を』
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