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1、その魔女の契約
そう、あれはよく晴れた日の午後だった。
「星ちゃん、起きなよ仕事中だろ」
聞き慣れた声がうっすらと聞こえた。
「まだお客様が来るかもしれないじゃんか……だいたい星ちゃん、ここんところ眠たそうにして……俺こうみえて星ちゃんのこと心配して――」
「……あー、分かった分かった」
俺は机に伏せていた頭を上げて欠伸を一つし、心配そうにこちらを見る同僚に目をやった。
薄茶のさっぱりとした短髪に心配そうな顔――雅弘は俺の目の前に立っていた。
俺よりでかい図体してんのに、小心者なんだよな。
俺は携帯していた短銃を確認して、机の上に置いてあった煙草を持って店を出ようとした。
「どこに行くの? まだ仕事中なんだから」
「あー……雅弘、ちょっと店番代わっててくれないか」
彼が深く溜め息をついた。不服そうな顔が一瞬見えたが苦笑を漏らし、俺にいってらっしゃいと言ってくれた。
店の外に出て、『依頼屋』という看板を見上げる。
依頼屋なんてやってても全然人が来ないんじゃやってけねぇのにな。
ポケットからライターを取りだし、煙草に火をつける。
そして街中を歩き出した。別に宛もない散歩。
周りは高いビル、金属の匂い、どこかで殺りやってる銃弾の音、と思えばとてつもなく美しい音色に合わせて踊る踊り子の姿。
そんな毎日見慣れた街を歩くのも嫌いじゃない。
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